先日東京新聞に掲載された読者の手紙が印象的だった。

 

施設に入所する94歳の母親。脳梗塞の後遺症で半身麻痺になっても元気で、趣味の塗り絵は10年以上続けている。娘さんである投稿者は、毎日面会に行き、色鉛筆を削るのが役目だったようだ。

3月、新型コロナウィルスの感染防止のために面会が禁止となった。それから3ヶ月、母親は容態が急変し駆けつけた時にはすでに意思疎通ができない状態で、そんまま1週間になるという内容だった。

投稿者は、持ち帰ったペンケースを開き、色鉛筆の削った分の芯が全くなっていたことに驚き、母親がどんな気持ちで削られることのなくなった色鉛筆を使っていたのかに想いを寄せる。

 

赤の他人の自分でさえ、だんだんと書けなくなっていく色鉛筆を使い続けた94歳の女性の気持ちを想像するとたまらない。

 

今回の新型コロナ禍で、高齢者施設では多くが感染防止のために面会禁止になっているというのは、早くから報道されていたけれど、高リスクの施設で感染を広げないために大変な努力を続ける施設の職員の方たちの目線から見ることがほとんどで、それが施設に入所する方本人にとっても、家族にとっても、いかに酷なことであるのか、あまり想像したことはなかった。

 

「コロナ」がなければ、たぶん人生の最終期を家族との触れ合いの中で穏やかに過ごすことができただろう94歳の女性が、突然家族との時間を絶たれた。普段なら家族の代わりに「色鉛筆を削」れたかもしれない職員も、「コロナ対策」でその余裕を奪われたのかもしれない。それは単なる想像に過ぎないけど。

 

無症状者が感染を広げるというこのウィルスはつくづくタチが悪いんだと実感する。