ハイキュー!! 32巻 ハーケン 感想(1)

稲荷崎戦も佳境に入った第3セット、烏野3点リードの7・10から27・27デュースまで。

久々に稲荷崎戦を読み直してみると、烏野の攻撃は結構稲荷崎に拾われていて、ラリーが続く場面が目立つ。
でも稲荷崎は何でもかんでも拾うというわけではなく、これを落としたら流れを持っていかれるとか、相手の心を折りに行くとか、要所要所、決して落としてはいけない1点を恐ろしい集中力で拾ってくるという印象がある。


281話「ハーケン」は、作者の説明にもある通り(「本誌掲載時にページが足りず、削ったところやギチギチに詰め込んでしまったところを描き直してあります」)、かなり(たぶん5ページ分)描き足したみたいだ。

 

3点リードしていたところから逆転されて14・13。
烏野の十八番マイナス・テンポの速攻を治のセットで成功されて、メンタル面への打撃も食らってる烏野。
それでもギリギリ踏ん張る烏野の攻撃を決して簡単には決めさせない。しつこいブロック、セッター侑の相手ファウルを誘う仕掛け、強烈なサーブ。烏野に点が入らないというわけではない。
17・16と1点リードされてるだけなんだけど、試合の流れは完全に稲荷崎が持っていってるのがよくわかる。

 

このエピソードのラストは、ここで一気に烏野を突き放しにかかった宮兄弟の変則プレイからのアランの強烈なバックアタックから日向のレシーブ。タイトルにもなってるハーケンに例えられてる。

「追い付き 追い抜き 突き放せ 梯子を外す1本を決めろ」という稲荷崎のコマから、侑のセット、銀島のスパイク、月島のブロック。
ブロックからのボールをダイレクトでセットされた治がアランに再セットする。完全に振られた烏野のブロック。
本誌掲載時よりも、楽しくてたまらない子供のような表情の侑やスパイクを打つ瞬間のアランが大きく強調されている。

侑の最初のセットから、アランのスパイクまで5ページ24コマの中に、コートの中の両チーム、ギャラリー3組、控えの菅さん・山口が描き込まれている。実況の中継もあるから、プレイのスピード感にプラスして、選手の声かけや会場の音まで想像できるような気がする。
で、ページをめくるとボールをレシーブしようと差し出された日向の両腕のアップ、体全体で強烈なアランのスパイクの勢いを殺す日向が描かれている。2ページで5コマ。
この5コマには音がない。
日向を知る烏野のメンバー、宮城合宿で一緒だった金田一たちはみんな、目を丸くして声も出ない様子。ここで、全日本監督の語りが入るんだけど、これはモノローグでまだ音としては聞こえてこない。日向の両腕のコマからずっと無音でいるような感じがする。
影山の「ナイスレシーブ」の声で、みんなが夢から覚めたように一気に声を出す。

試合中の騒がしい音がいっぱいの場面から一気に無音になって、また一瞬後に試合中の音が戻ってくる感じが、すごくよくわかる。
もともと音のないマンガという表現手段の中で、音と音を前提にした無音・静寂の状況を、絵だけでよく表現できるなあと思う。