米朝首脳会談後の報道を見て

歴史的な米朝首脳会談から一夜が明けた。
新聞やテレビなどの報道は、アメリカ側の譲歩が目立つ、と批判的な論調が多いような気がする。
「完全、検証可能、不可逆的非核化」(CVID)が書き込まれなかったのに、北朝鮮の体制の安全の保障を与えただの、交渉が続いてる間は米韓軍事演習は停止するだの、非核化の期限が書かれてないだの、トランプ大統領は包括的な合意というけど、メディアは曖昧すぎると批判する。

トランプ大統領が、「完全な非核化には時間がかかる」と柔軟な姿勢に転じたように見えることに対して東京新聞の記事は【北朝鮮が交渉を長期化させ、圧力を緩和させる得意の戦術に米国を引きずり込んだといえそうだ。】と書いていた。

北朝鮮の過去を考えればそういう見方ももっともなのかもしれない。
ただ、完全な非核化には時間がかかるのは事実(核の専門家の中には、15年かかるという人もいるみたいだ)みたいで、その間何の見返りもなしというのは現実的ではないという説明はもっともだと思う。そもそも北朝鮮の自発的な協力がなければ、完全な検証をすることも難しいという状況では、どこかでアメリカ側が譲歩しなければ、非核化なんてできないんだろうと思う。

米韓の軍事演習の停止についても、とにかく信頼関係を作り上げていかなければならない相手と交渉する一方で、軍事演習を続けるのは適当ではないというトランプ大統領の言い分は、外交素人の一般人としては納得できる説明なんだけど、専門家にとってはビックリものの譲歩らしい。

ロシア疑惑の捜査や近づいてくる中間選挙に向けてのアピールという”不純な”動機が仮にあったにせよ、これまでのどの大統領もできなかった北朝鮮のトップとの会談を成し遂げたのは、頑なにワシントン流に染まることなく(これまでの報道を見てるとそう思う)ここまでやってきたトランプ大統領だからこそできたことだというのは確かなんだと思う。


今回アメリカは大きく譲歩したと言われるけど、イランの核合意にしろパリ協定にしろ、これまで積み重ねてきたものを簡単にひっくり返すトランプ大統領の壊し屋としての腰の軽さをみれば、北朝鮮が交渉を長引かせる今まで通りの対応をして、アメリカの譲歩にあぐらをかくというのは難しいような気がする。


下の人間といくら話をしても何も決まらない。トップと話ができさえすれば問題は解決する、北朝鮮はそういう国だ。北朝鮮について今までそいういう解説がされてきたような気がする。
今回いろいろ批判はあるけど、初めてトップ同士が会談した。

 

下のレベルでの協議を積み上げて最後の段階でトップレベルの合意文書という標準的な交渉とはまるで異なるやり方でこぎつけた今回の会談(多分)。
今回の首脳会談は、本当に映画のワンシーンを見てるような、ノンフィクションではなくフィクションの世界の出来事のようだった。
何もかもうまくいけばいいと夢見るようなビデオが流された後に、辛辣な記者たちの質問が続いたトランプ大統領の記者会見。記者たちの厳しい質問に、一気に現実に引き戻されたような感じがしてちょっと複雑な気分だった。

それでも、曖昧な声明から始まったとしても、時間はかかっても、核に頼らない平和の地域にするという決意で、日本も最大限の力を尽くすべきだと思うんだけど。