ハイキュー!! 第287話 アンチ奇跡 感想

26・26のデュースで、侑のサーブから始まる今回。無回転ゆえのゆらぐような変化が特徴のジャンプフローターサーブ。侑のジャンプフローターは、ゆらぎにスピードが加わるみたいだけど、静止画ではなかなかその両方を見せるのは難しいんだろうなあと思う。大地さんが弾いたボールが勢い良く後ろにそれたのを見て初めて、ふんわりしたボールではなく勢いのあるボールだったんだと気づいた。


侑のサーブで27・26と、逆に稲荷崎に握られたマッチポイント。相手はビッグサーバー。どんな状況だろうと目の前の1点を取ることに集中するだけということはハイキュー!!の物語の中で繰り返し語られてきた。でも、第1セット15・14の時の1点とファイナルセット27・26の1点を、同じメンタルで臨むなんて普通はできない。
「奇跡はいらねえんスよ」と、声をかけた烏養さん。侑のエースに高揚する相手コートとベンチの空気に支配されそうな場に抗するために、たぶん一息吐いてから、力を抜いて声かけしたのかもしれない。

練習とギリギリの試合の中で繰り返してきたことを、この断崖の淵でも繰り返すだけだということは頭ではわかっているんだろうけど、この崖っぷちに立たされたら、いやでも身体はこわばってしまうんだろうと思う。力の抜けた烏養さんの声に、大地さんも田中さんも金縛りが解けたような反応だ。
メンタルの強さに平均値があるとしたら、田中さんも大地さんも(たぶん旭さんも)、基準値を超える強さを持ってると思うけど、(俺に来い俺に来い俺に来い」と呪文でも唱えるような西谷さんや、なんで奇跡?って顔をしてる日向には、平均だとか基準とかいう言葉はまるで当てはまらないような気がする。点差が見えてないのか、点差と目の前のプレイに集中することが、自分の中で完全に切り離されているのか。どういう精神回路なんだろう。


今回一番印象に残ったのは、影山くんの一言。(俺のおかげの)「ナイスキー」。田中さんの極上ストレートにも「ナイスキー」と声をかけていたけれど、あの時も(俺のおかげ)が付いていたのかもしれないと思うと、ちょっと笑ってしまう。
この試合中、高校1年とはとても思えないような、一人次元の違うような集中と冷静さを見せる一方、楽しそうな顔はあまりないなあと感じてたから、ちゃんと楽しそうな(?)顔を見ることができてよかった。
勝ち誇った王様顔を見て、セッターは、「支配者っぽくて1番かっこいい」と言った影山のセリフが1巻にあったのを思い出した。
「俺のおかげ」という意識が影山のいう「支配者」とイコールかといえば、ちょっと違うような気もするけど。

この場面、影山には、献身的に日向にボールを供給しようなんて意識はこれっぽっちもなかったと思うけど、はたから見てる分には多分献身的なプレイに見えるのが面白い。
このちょっと前に「あと5センチ」であげそこなったのを、今度はちゃんと飛んできた。スパイカーの最高打点に置いてくるようなトス。青城戦で伊達工の黄金川が青根にあげる場面で、同じような表現が使われていた。黄金川は身長があるから、苦もなくやっていたけど、影山くんはギリギリ飛んでる。それでも、以前同じような状況でワンハンドトスをしてたところを、今回はちゃんと両手であげていた。
バレーは身長の競技、酷な面のある競技だなあと思うけど、同時に、天才と表現されてきた影山がこの試合中、たぶん影山自身が設定してるだろうハードルを地道にクリアしてるんだろうなあとも思う。

それをさせるのは、日向へのライバル心みたいだ。研磨は「容赦がない」と言い、侑は「同情すんで」というけど、影山自身は日向との勝負を楽しんでいるんだろうなあ。それに勝つことで、自分が成長しているという感触もつかんでるのかもしれない。


今回のタイトルは「アンチ奇跡」。
「奇跡はいらない」から一歩進んでるような気がする。奇跡頼みじゃ優勝できない。勝つためには、運が必要な時はあると思うけど、奇跡を願う心持ちは、勝利を遠ざけるのかもしれない。

 

ここのところ毎回、次は決着がつくのかなと書いてるような気がするけど、今回も同じだ。
27・27で、日向後衛サーブのターン。セッターは後衛で日向は早いテンポのバックアタックも持っているけど、今までならフロアディフェンスに不安が残る場面なのかもしれない。でも、月島さえ信頼し始めてる。今度こそ、決着がつくかなあ。