加計学園問題の報道を見て

加計学園問題で、文科省が「総理のご意向」文書の再調査をすると方針転換を発表した日の前日の、菅官房長官の記者会見は、いつもと違う雰囲気だという事は、テレビ画面を通しても感じた。違ったのは、官房長官ではなく、記者達だ。官房長官の変わらぬ紋切り型の答弁に対して鋭い突っ込みで質問を畳み掛ける様子は、あまりにもそれまでの質問の仕方と違うから、一体急にどうしちゃったんだろうと思ってたら、鋭い突っ込みをしていたのはいつもの政治部の記者さん達ではなく社会部の記者たちだったらしい。

「総理のご意向」文書が出ても安倍総理は痛くもかゆくもないという田崎史郎さんが、昨日のテレビ番組でそう説明してた。
会見では、菅官房長官に食い下がっていた記者が、同じ質問は繰り返さないよう注意される場面があった。それに対しその記者は、納得できない答えだから繰り返してるという趣旨の発言をした。

この場面を見た田崎さんは、政治家としては、同じ質問には同じ答えをしなきゃいけない、答えを変えると突っ込まれるから、と言った。それが政治家の力量らしい。
政治部記者ならその辺はわかってるから、同じ内容の質問は繰り返さないという。

同じ質問を手を替え品を替え、違う角度から突っ込んで聞いて、本音の答えを引き出すのが記者の力量なんだと思っていたんだけど、どうやらそうじゃない記者の世界があるらしい。

 

獣医学部の新設について、田崎さんは、総理が一人で決めたわけじゃない。諮問会議で決めたことだという。そういえば安倍首相も、自分の意向など入りようがないというようなことを言っていた。戦略特区諮問会議の決定は、岩盤規制に穴を開ける要らしい。というので、諮問会議のワーキンググループの会議資料を読んでみた。
文科省農水省からのヒアリングが2015年6月8日と2016年9月16日の2回行われてる。それぞれ40分、20分くらいのヒアリングだったみたいだ。


その記録によると、文科省は獣医系大学の定員管理は必要という立場。
「獣医師養成では産業動物の診療、防疫、あるいは食の安全、人獣共 通感染症対策といった公衆衛生の確保という国民の健康に直結する問題を扱うということ で、無制限に養成するということが質の確保の観点から望ましくないという考えがあり、 また、獣医系大学における教育というのは獣医師養成に特化しておりますので、卒業生の 卒業と密接不可分であると考えております。その適正規模を検討するに当たって、やはり 獣医師の各分野における社会需給の見通しというのを踏まえる必要があるのではないかと いう考え方から、獣医系大学の定員管理を行っているところでございます」という理由だそうだ。

委員の先生方は、定員管理は必要ない。市場に任せるべきという立場。競争で獣医師の質が高まるという。

既存の獣医師養成でない構想、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要についても議論されていたけど、文科省は既存の大学、学部で対応してると言い、委員の先生方は供給を増やすべきと言う。

委員の先生からは、獣医師の需要について再三質問が出てたけど、農水省によれば現状で足りているみたいだ。

定員管理が必要かどうか、新しい分野に既存の大学が十分な対応をしてるのかどうか、なんの知識もない国民としては、正直、どっちが正しいのか(正解があるのかも)よく分からない。ただ、ペット獣医師の方はともかく、防疫関係を担うような獣医師について市場の競争の中で質を高めるというのは、ちょっとそぐわないような気がする。

違和感を感じたのは、獣医師教育の現場の人間が会議に参加してないということだ。
読んでいてなんだか机上で上滑りしてるような印象を受けたのは、実際の現場の声無しの議論だったからかもしれない。(文科省農水省の資料・説明の中に入れこまれてるのかもしれないけど)

2回目のヒアリング(2016年9月16日)の約2ヶ月後の11月9日の諮問会議で獣医学部の新設が決定された。諮問会議では、農水相が産業動物獣医師の確保が困難な地域の課題を解決する必要ありと言っていて、前2回のヒアリングでの農水省の説明とはちょっと違うニュアンスになってた。
何れにしても40分弱の会議で、(テーマは他にもあったから獣医学部についてはほんの少ししか言及されてない。12ページのうち多分1ページ分くらい)決まってしまったみたいだけど、前2回のヒアリングからこの結論というのは、結構すっ飛ばしてるなあ、って感じがする。