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戦時のトラウマ、って簡単に言えない

今日の東京新聞に、戦場で精神を病んだ旧日本軍の兵士の診療記録についての特集記事が載っていた。

記事によると、第二次大戦の時代、戦場で精神を病む兵士の増大を受け、1938年「戦時神経症」の専門院に指定された千葉の国府台陸軍病院。1945年の終戦時には、全資料の焼却命令が出たものの、患者8000人分の病症日誌は医師らによりドラム缶詰にされ中庭に埋められたという。患者一人につき数十枚に及ぶという記録。戦後、同じ千葉県内に開業した、国府台病院に勤めていた医師の一人が、15年かけ資料を整理研究。『「誰かがまとめて発表しないと、患者が可愛そうだ」』と、自費出版されたという。
第二次大戦で「戦時神経症」を患った元兵士は今も存在するという。2015年度、戦傷病者特別援護法に基づき医療費が給付された197人のうち、精神疾患は11人。


8000人分✖️数十枚の紙の量がどれほどのものかわからないけど、軍の命令に反して残したのは、「貴重な資料」だからというだけじゃなかったような気もする。

記事によると、第一次大戦中の精神を病んだ兵士は、その原因を本人の精神的弱さと決め付けられ、存在も隠されていたという。この記事とは関係ないけど、特攻に失敗して生きて戻ってきた兵士たちの存在を隠すためにあったという秘密の寮の特集番組を、かなり前にテレビで見たことがある。(生きて戻ってきたことがあってはならない失敗だという任務って、いったい何なんだろうと思う。)
文字どおり命をかける戦場から戻ってきて、その存在を否定されるなんて事を受け止め切る事が出来るんだろうか。


記事に埼玉大名誉教授 清水寛氏の『「殺し殺されの体験をすると人生で二度苦しむ。一度目はその直後、二度目は死ぬ間際だ。心に深く刻まれた恐怖が弱った体によみがえる」』という言葉が載っていた。
以前、高齢となったホロコーストの生存者の介護問題に関する記事を読んだ時に、この言葉と同じような状況についての記述があったのを思い出した。
現在の記憶をなくして過去に戻ってしまう高齢者のケースだ。老人が、最近のことより昔のことの方をよく覚えてるというのはよくあることで、その程度によって、介護が必要になるというのもよくあること。ただ、ホロコーストの生存者の中には、その過去の記憶が問題になる場合がある。
家から無理矢理追い立てられ、貨車に押し込まれ、両親から引き離され、もう二度と会えなくなる。蘇るのが、そんな記憶の世界だったら、それはどれほどの苦しみなんだろう。若い頃、幼い頃に地獄のような経験をしてきて、人生の最後に再び記憶の中で、その世界に帰る。
70年以上前のナチの世界に再び住まなければならないとしたら、その苦しさは、どれほどのものなのか、想像もできない。

死の間際によみがえる恐怖。でもその恐怖は統計にはのらない。