ハイキュー!! 第223話 刺刺 感想

今週は、烏野のとげとげしさを伊達工が緩和してくれてるという、ちょっと不思議な感じ。

それにしても今回は、烏養さんと我慢比べしてる気分になってしまった。根性ない読者なので、早くも音をあげそうです。

ユースでレベルの高い選手たちとプレイして、強さに浸る心地よさを知ってしまった影山が、烏野に戻って、チームメイトとユースメンバーの力のギャップに苛立ちを感じ始めた挙句の、伊達工戦でのピリピリ感なのか。
もし影山が、北一の王様時代に、チームメイトとあれほどの断絶を経験していなかったら、ここで月島の言うように、王様に逆戻りというのもありうることだと思う。
でも、実際には、こっぴどい断絶を体験して、信頼することもされることも失った影山が、インハイ予選で青城に負けた試合をきっかけに、信頼を取り戻してきた過程を考えると、無意識に烏野とユースを比較にかけてるとしても、そう簡単に北一時代のような王様に戻ってしまうとは考えにくい。
いくら影山でも(いくらあつかいしてすみません)、そこまで単純バカじゃない、はず。

田中さんはキレ気味の反応をしてるけど(月島の反応は論外)、西谷さんへの言葉も、田中さんへの「ほかにどんな言い方がありますか」も、月島のブロックへの指摘も、影山はいたって冷静に話してるように見える。
言い方があれだから、唐突感と相まって、ものすごく衝撃的な感じがしてしまうんだけど、バレーボールの試合中のチームメイトへの指摘として、影山の今回の言葉は、そんなに驚くようなことではないと思うんだけど、どうなんだろう。

今までも試合の中で影山が何か気づくこともあったはずだけど、これまで影山から、烏野のメンバーに何か要求や指摘をする場面はほとんどなかったと思う。それが、今回唐突とも思えるような形で、物言う影山になったから、他のメンバーの多くは戸惑いや反発という反応をしてるみたいだ。
日向を除いて。日向は、こちらもまた静かに、影山を観察するように見てる。
ユース合宿後の影山が、合宿で得たものをチームに還元し、それが烏野のチームとしての力の底上げにつながっていくのかと、先週は思った。どこまで意識してやってるのか、まだよくわからないけど、影山がチームを変えようとしてる事は確かだと思うんだけど。
だけど、「じゃあ、決めてくださいよ」には、ドキっとした。今までハイキューを読んできた中で、一番ドキドキしたかもしれない。

第1セット、7・10で烏野が3点ビハインドの場面で、イイ感じにあげたトスを、旭さんがブロックに捕まった。バレーボール経験ないからよくはわからないんだけど、自分があげたトスをスパイカーがどう処理するか、セッターは、セットした瞬間にイメージしてると思うんだけど。この場面の旭さんのプレーは、影山のイメージから外れてたんじゃないかと思う。旭さんがドシャットされたすぐ後のコマの、旭さんをじっと見つめる影山の表情は、そんな感じがする。

伊達工が先に20点台にのって17・20。旭さんが2回続けてブロックにつかまって、伊達工に20点目をあげたみたいだ。そのあと月島のブロック跳び損ないで、伊達工にバックアタック決められて1点追加。次の伊達工のサーブを大地さんがきれいにセッターに返して、影山はもう一回旭さんにあげた。真ん中にブロック背負ってプレッシャーがあるとはいえ、この前には旭さんが連続でブロックにつかまってるし、レシーブはきれいに返ってきたし、ここはレフトを選択しなくてもいいような気がするんだけど、影山はレフトへ。これだけ見てると、影山はあえて旭さんにあげてるようにも思える。で、旭さんは今度は力みすぎで大きくアウト。トスは良かったよ、という旭さんに対して、影山の「じゃあ、決めてくださいよ」がくる。
口調は静かだったと思う。きっちりあげてるのに決めきれない旭さんに対して、感情的に苛立って吐き捨てた一言ではなかったと思う。で、静かな影山は凄みがあって怖い。


旭さんが試合前に、西谷さんとの会話の中で言っていた、試したいことを、影山は知っているのか。旭さんがそれを影山に話した感じはないけど、旭さんのプレーを通して、気づいてるような雰囲気はある。
白鳥沢戦で月島が牛島のスパイクを止めた時、影山は、相手セッターのトスがほんの少し乱れたこと、それによって牛島のジャンプに余裕がなくなったこと、さらに月島がその瞬間を見逃さなかったこと(というより待ち構えてたことさえ)理解した。ギャラリー席で見ていた烏野応援団の中でも、それを見て取ったのは月島の兄だけだった。コート全体を上から冷静に見ることのできた、現役でバレーボールを続けている人たちでさえ、月島兄を除いて見過ごしたような流れ。
それを、一瞬目を離したらボールを見失ってしまうだろうスピードでゲームが動いてる中で、影山は理解した。第5セット最後のプレイで、日向と場所を変わった時も、よくわからないけど、ゲームの流れの可能性のパターンを予測してのことだったんだろう。
自陣は当然として相手コートの側も見ることのできる広い視野をベースに、ゲームを読む目を自然と持ってるんだと思う。
そんな影山が、正セッターになってから(特に最初の頃は旭さんがたじろぐほど、打ちやすいトスを追求してた)ずっと上げてきたエースの調子や、普段との違いに気付かないはずがない(多分)。
エースが、いつもとは違う何かをしようとしてることに加えて、その試したいことが何なのかさえある程度の見当はつけてるのかもしれない。
それでも旭さんから何の要求もないから、いつも通りどんな状況でも可能な限り良いトスを上げることに集中してたように見える。

とすれば、「じゃあ、決めてくださいよ」は、トスがこのままでいいなら、変える必要がないなら、このトスできっちりとやろうとしてることの結果を出してください、ってニュアンスに思える。

影山は自分の中で考えてることの最後の結論部分しか実際に口にしない傾向があるから、言ってる事は概ね間違っていなくても、その解釈が、受け取る相手によって何通りかになってしまうことが結構ある。(ユースでもその気はないのに、結果相手を煽ってることが何回かあったけど)。
改めて言うまでもないんだけど、たいへん誤解を受けやすいタイプだと思う。


烏養さんがタイムアウトをとらないのは、影山の方向を見極めたいからかも知れない。おりこうさんと言われたことに影山が何かしらの迷いを持ってることを、烏養さんは知ってる。それに対して、外しちゃいけない道だけは示した。それを、影山がどう受け取ったのか、どういう答えを見つけたのか、見つけようとしてるのかを、見極めようとしてる。影山が、スパイカーの打ちやすいトスを上げてる限りは、そう心配しなくてもいいから。そうでなければ、雰囲気悪くなりそうなとこで、とっくにタイムアウトをとってるはずだ。
と、ここまで書いてきて、何だかだんだん烏養さんの態度が平静すぎるようにも思えてきた。前回、影山とおりこうさんについて話をしてた場面があったけど、スパイカーにとって最高のトスの他にも何か、その時にアドバイスをしたのかもしれない。その結果だとしたら、突然に見える物言う影山も、平静な烏養さんも納得できるんだけど。
それにしても、インハイ予選青城戦で影山を引っ込めた後、その反応を気にしてることを武田先生に見抜かれて焦ってた時と比べると、まあ練習試合ってこともあるけど、なんか烏養さんも指導者として着実に成長してるって感じがする。

大地さんの言うピリピリ感は、夏の合宿で日向がチームにもたらしたピリピリ感とはちょっと違う感じがする。戸惑い混じりの緊張感。
日向はわかりやすかったから、すぐにチーム全体に緊張が走ったけど、影山のはわかりにくい。
烏野は常に変化を必要とするチームで、変化の前には何らかのきっかけが必要だ。今回の変化は影山が主導しそう。チームの変化とともに、セッターとしての影山もおりこうさんをリセットできるかな。

影山のように、ゲームのただ中にいながら同時にまるで外から眺めているような視線でゲームを見ることができる(多分そんな感じだと思うんだけど)選手が、チームのゲームを作っていく主導的役割を果たしたら、どんな感じになるんだろう。なんかすごそう。この先の展開はまだはっきりしないけど、もし影山がそんな風にステップアップしていったら、春高本戦がすごく楽しみになる。今はまだ始まったばかりだから、トゲトゲで痛いばかりかもしれないけど。
北一と違って、影山の理解者はちゃんといるから、大丈夫だと思う。


ピリピリ感漂う烏野に比べて、谷地さんじゃないけど、伊達工の楽しそうなこと。二口さんのイケメンさと発言のアンバランスなとこ、いいですね。天童さんと蛇の主将のモットーを足して2で割ったような言葉だけど、あの顔で力説するのはちょっとずるいかも。

影山はその才能ばかり評価される場面が多いけど、地味な練習を黙々と積み上げてきた選手でもあるってことを、黄金川の言葉であらためて思いださせてもらった気がする。創造的、とか独創的、とか華やかな形容詞で飾られるプレーもすごいと思うけど、正確なトスをどんな状況でも一試合あげ続けることが地味だけど多分最も重要なセッターの仕事なんだと思う。だから、黄金川の、機械みたい、って言葉は、きっと最高の賛辞なんだろうなあ。それをあげるために費やした時間を思って、黄金川は感動してるけど、こういう視点が描かれることに、感動してます。

影山は少なくても北一と同じ王様には戻らないと、長々と否定的に書いてきたけど、本当に影山が王様に戻っちゃったらどうしよう。来週までドキドキだ。